書籍紹介
今回は20世紀の社会主義者、経済人類学者であるカール・ポランニーを紹介します。
ポランニーは最近研究が進んできており、研究書や論文などが多く刊行されています。
カール・ポラニー『大転換――市場社会の形成と崩壊』(野口健彦・栖原学訳)東洋経済新報社、2009
ポランニーの代表作であり、その構成はかなり複雑。労働・土地・貨幣の擬制商品論と社会から離床した経済を再び社会に埋め戻すという命題、自己調整的な市場経済とそれに対する社会の自己防衛という二重の運動は押さえておきたい。
カール・ポランニー『経済の文明史』(玉野井芳郎、平野健一郎編訳)筑摩書房、2003
本書はポランニーを日本に紹介した1人である玉野井編訳の論文集である。ポランニーの経済人類学的見地が見事に整理されている。
カール・ポランニー『経済と自由――文明の転換』筑摩書房、2015
日本初邦訳の論文が多く収録されている。社会科学者としてのポランニーが垣間見られる。
カール・ポランニー『市場社会と人間の自由』大月書店、2012
ポランニーの多岐に渡る研究の中の社会哲学的領域についてまとめたもの。経済人類学にとどまらない、ポランニーの広範な知的遺産が収録されている。
カール・ポランニー『人間の経済』岩波書店、1980
ポランニーの晩年の遺稿を弟子たちが編集したもの。結論に当たる部分は書かれていないが、ポランニーの経済人類学的研究の集大成である。
若森みどり『カール・ポランニー――市場社会・民主主義・人間の自由』NTT出版、2011
ポランニーの研究生活を、経済思想史的に再検討したものであり、未完に終わったポランニーの晩年の研究の一部にも触れることが出来る。
若森みどり『カール・ポランニーの経済学入門』平凡社、2015
ポランニーの基本的な考え方が詳しく解説されており、ポランニーを読む際の副読本におすすめ。
ギャレス・デイル『カール・ポランニー伝』平凡社、2019
重厚かつ緻密なポランニーの伝記。近代の社会思想や中東欧の歴史の素養がないと、読み切るのがつらい。
書籍紹介
〈脱成長〉論を理解する上で重要だと思われる邦訳された書籍を紹介していきます。
解説はおいおいやっていきます。
セルジュ・ラトゥーシュ『経済発展なき社会発展は可能か?――〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学』(中野佳裕訳)作品社、2010
〈脱成長〉論の基本書として位置づけられる。
セルジュ・ラトゥーシュ『〈脱成長〉は、世界を変えられるか?――贈与・幸福・自律の新たな社会へ』(中野佳裕訳)作品社、2013
〈脱成長〉論を倫理学の視点から捉え直したものである。
セルジュ・ラトゥーシュ、ディディエ・アルパジェス『脱成長のとき――人間らしい時間を取り戻すために』(佐藤直樹、佐藤薫訳)未來社、2014
上記のラトゥーシュの本は大部であり、初学者には難しいため、フランスの高校生向けに書かれたものを訳したもの。平易な文体と、重要な語句は説明してあるため、入門編としてはよい。
セルジュ・ラトゥーシュ『脱成長』(中野佳裕訳)白水社、2020
ラトゥーシュによる脱成長論の到達点、訳文もこなれていて読みやすい
勝俣誠、マルク・アンベール編著『脱成長の道――分かち合いの社会を創る』コモンズ、2011
イリイチのコンヴィヴィアリティ概念を基調として、日本とフランスの研究者がそれぞれに脱成長の道を示したもの。学術的な論考というよりは多様な背景をもつ彼らの基本的な考えを通じて、〈脱成長〉論のもつ魅力や可能性を感じさせる。
中野佳裕『カタツムリの知恵と脱成長――貧しさと豊かさについての変奏曲』コモンズ、2017
ブログはじめました
20代の頃、セルジュ・ラトゥーシュの〈脱成長〉論に衝撃を受け、その後カール・マルクスやカール・ポランニー、イヴァン・イリイチにもかなり影響されてきました。
日本の文脈においては、〈脱成長〉論は緊縮、あるいは清貧の思想として、かなり誤解された形で受容されているように思います。
ここでは、〈脱成長〉論関連の書籍の紹介や、ラトゥーシュの著作を通じて〈脱成長〉論の解説をしていこうと思います。